2009年8月26日 読売新聞東京本社 朝刊
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教師が教員免許更新講習でNIEを学ぶ。

新聞記者に“変身”した約60人の教師が鋭い質問を投げかけた。

「オリンピックに出場できた理由は」「日の丸を背負う感じは」--。

愛知教育大(刈谷市)で8月17日、NIEをテーマに開かれた教員免許更新講習。ゲストの北京五輪シンクロナイズド・スイミング代表の石黒由美子さん(25)を相手に、受講した教師らが記者役になり、模擬記者会見に挑んだ。

「あきらめなかったから」「メダルを逃したら日本に帰れないと思っていた」--。

石黒さんは子どもの頃、交通事故で540針縫うけがをしながら五輪代表まで選ばれた気持ちを語った。約30分のインタビューの後、教師らは悪戦苦闘しながら400字の記事にまとめた。記者にふんして質問した尾張旭市立東中学校の二村尚文さん(33)は、「NIEは、やったことがなかったが、これを機に短い時間からでも始めてみたい」と満足そうに語った。

「新聞づくりの大変さ、難しさを実感してもらうことが狙い。文字の裏にある、人のかかわりを分かってもらえたら」と講師を務めた土屋武志教授(49)は話す。

講習でNIEを取り上げたのはコミュニケーションに有効との考えから。言葉や文字で考えを伝えるのに、簡潔にまとめる新聞記事は参考になり、その作成はトレーニングになる。伝える技術だけでなく、新聞から様々な話題を知ることで、「子どもが友人や親と話す際、内容のあるコミュニケーションにもなる」。

NIEと聞くと尻込みしてしまう教師もいるが、「子どもに『なぜ』『どうして』と疑問を持たせるような授業を行ってほしい。新聞にはそんなネタがたくさん転がっている」と話している。

「環境問題をテーマに記事を切り取ってください」。8月4日、北海道教育大函館校でNIEを題材に開かれた講習で、阿部二郎准教授(52)が受講生の教師約20人にそう呼びかけた。

エコポイント制度や異常気象のニュースなど、教師らは目についた記事を切り抜く。その後、グループごとに各自が持ち寄った記事を分類し、全体のタイトルを考えた。あるグループは記事を「自然」「リサイクル」などに分類し、全体に「自然と活用」というタイトルを付けた。情報をどう取捨選択し、活用するかを学ぶ講習だった。

その一方で、ある新聞社の英文サイトに昨年、不適切な記事がそのまま掲載された問題などを挙げ、「記事をうのみにせず、自らチェックした上で扱うべき」と、情報活用の注意点を付け加えることも忘れなかった。

阿部准教授は「新聞に載っている記事の量を見れば、今の社会で重要視されているテーマが何か分かる。記事を拾い集めて今を知る。新聞という窓から世の中を見て、早く大人になるのはいいこと」と意義を語った。

教師は講習でNIEを学び、その成果は学校に広がっていく。(名倉透浩)