2010年5月14日 読売新聞東京本社 朝刊
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3月中旬、東京都足立区立中島根小学校の3年生の教室。「いただきます」のあいさつで、子どもたちが一斉に給食にはしをつけた。グリーンピースや大豆の入ったひじきご飯、かじきの竜田揚げ、もやしのゴマ酢あえなどを、どの子もおいしそうに味わっている。小野鈴菜(りんな)さん(9)は「前は豆が苦手だったけど、残さずに食べられるようになった」と話す。

足立区は2008年度から、全区立小中学校109校で「おいしい給食」事業を実施。豆や小魚など、子どもたちが苦手な食材を用いたモデル献立の作成や、おいしさに配慮した区独自の栄養摂取基準の策定などを進めている。

同小の栄養士、木村いく子さん(60)は「ご飯やハンバーグの中に豆を入れたり、ほんの少し味付けを濃くしたりして、食べやすく工夫しています」と説明する。

きっかけは、食べ残しの増加だった。同区教育委員会おいしい給食担当の笠尾康俊係長(45)は、「調べたところ、国の基準に厳密に従うあまり薄い味付けになったりして、食べ残しにつながっていることが分かった」と振り返る。

このため、同区では、文部科学省の学校給食摂取基準では2.5グラム未満とされている8〜9歳の1人1回当たりのナトリウム摂取量(食塩相当量)を同3グラム未満とするなど独自基準を作り、従来より濃いめの味付けを可能にした。

さらに、牛乳を出さなくてもいいことにした。牛乳は、各栄養素をどの食品からとるべきかを示した同省の標準食品構成表で毎回、出すことになっているが、「献立によっては飲みきれず、冬場はおなかをこわすこともある」といった現場の指摘を重視した。

もっとも、牛乳好きの子どもたちが多く、牛乳が出ない日は各校平均で月に1回程度だが、これらの日に中華丼やスープを出し、カルシウムはヨーグルトなどで補うなど工夫した。この結果、同区では、08年度の区立小中学校の年間残菜量が約342トンとなり、前年度から約40トン減少した。

中島根小では、保護者向けの給食試食会や親子料理教室も開いている。「足立区ならではの学校給食は保護者にも好評で、レシピを聞いてくるお母さんもいる。家庭での食生活にもいい影響を与えているのでは」と、同小の坂口正己校長(58)は話している。(奥田祥子、写真も)