2010年7月28日 読売新聞東京本社 朝刊
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6月16日、徳島県鳴門市立撫養(むや)小学校5年の教室。前方のスクリーンに、泣いている男の子「とっ平くん」と、彼を見守る鳥のキャラクター「フレン鳥(どり)」のアニメーションが映し出された。鳴門教育大学(同市)の予防教育科学教育研究センターが開発した予防教育の教材だ。

アニメには、両親とはぐれた女の子が登場し、この子を助ける方法を5人の班に分かれて話し合うことに。「声をかける」「お母さんとお父さんの所に連れて行ってあげる」など、できそうな案を考えて発表した。

「助け合いのやり方はいっぱいあることがわかったね」と、授業で講師を務めた同センター研究員の勝間理沙(りさ)さん(33)が語りかける。映像は、フレン鳥がみんなの「仲良しパワー」をアップさせ、とっ平くんにクラスの女の子が「大丈夫?」と声をかける場面で終わった。

同センターは2009年に設立され、心理学、医学、栄養学、保健学などの専門家が、いじめや不登校などを防ぐ予防教育科学を研究している。国内外の実証データを現場教育に生かし、子どもを救うのが狙いだ。

同センター所長の山崎勝之・同大教授(55)は約10年間、いじめなど問題行動を起こす子どもの心や行動の特徴を研究した。この結果、いじめる側に回る子どもは共感性が低いなどのデータを得たという。

授業で使う教材は、子どもたちを引きつけるため連続ドラマ仕立てにし、とっ平くんなどのキャラクターを登場させ、最後にとっ平くんがみんなと仲良くなるという話に。アニメはセンターの研究員がパソコンで手作りし、計40分程度のものが完成した。

センターは今年度から、これらのアニメ教材を使ったり、子ども同士で話し合う小集団活動を取り入れたりした「『いのちと友情』の学校予防教育」を開始。県内の6小中学校に講師を派遣し、いじめ、うつ病やストレス、生活習慣病などを予防するための授業を行っている。

撫養小でも、いじめや暴力などの予防を目的に、6月から7月にかけて週1回、計6回の授業を実施した。授業を受けた児童の対人関係力などを調べたところ、「困っている友人を助けるか」などの評価が事前より上がったという。

来年度からは、研修を受けた現場教員がこれらの授業を一部受け持つ。教員養成大学に蓄積された研究データが、現場の対策に活用されている。(京極理恵、写真も)