2010年2月 9日 読売新聞東京本社 朝刊
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新聞が充実した図書室で、NIEの授業を展開する。

資料や新聞の切り抜きで分厚くなった思い思いの「時事ノート」を手に、生徒たちが図書室にやってきた。新聞5紙を購読している島根県立出雲商業高校では、新聞を使う授業を図書室で行うことが珍しくない。

行われていたのは、1年の現代社会の授業だ。各自が関心をもったテーマについて、毎週二つずつ記事を選んで張り、要約と意見を書いて提出した。この日、生徒たちは、先生からもらった助言や課題について調べる作業をした。

「用語集、統計などを含め役立つコーナーも作ってもらったので、そちらもうまく活用して。さあ民族大移動!」と担当の岡田誠吉教諭(57)。

竹島領有問題、出雲そばの由来など、地元ならではの問題を調べる生徒もおり、山本恵美子学校司書専門員(58)ら図書班の教員が、他校からも参考資料を借り出すなどして準備した。

次回発表を控える楫茜(かじあかね)さん(16)が選んだテーマは、「現代人のうつ」。「個人が気をつける問題というよりも、社会的な理由を考えたい」という楫さんに、教諭は「不景気によって生活苦になったり、人間関係が希薄化して孤立する人もいる。そのあたりから自分はこう思うというのをまとめたらどうだろう」とアドバイス。

狙いは、生徒たちが世の中の問題に関心を持ち、情報を整理する力、表現力を身に着けてもらうことだ。「最終的には、人の見方に対し、果たしてそうかな、私は違うというようなやり取りができれば」と期待する。

1年前、生徒たちに「新聞で見る欄は?」と聞いたら、スポーツ、番組、広告などが多かった。藤原りほさん(16)は「中学まではパラパラ眺める程度だったけど、地元の話など興味のある記事は読み込むようになった」。新聞活用授業を通じ、新聞の面白さに気付き始めた生徒は多い。

2年の美術の授業も図書室だ。商業デザインを学ぶうえで、新聞広告が格好の題材と考える高橋恭子教諭(52)が指示すると、生徒たちはあらかじめ考えていた広告が載った紙面を、収容棚からさっと取り出してきた。

「ではみんなが選んだ広告を“自慢”してもらおうかな」

小川彩夏さん(17)が紹介したのは、1面大のスペースの真ん中に、「さみしくなったら、おヘソを見よう」という標語とともに、小さな人間が自分のおへそを見ている素描。「空間をぜいたくに使っているね。何を言いたいんだろう」と教諭。「隅に小さい字で『あなたが一人じゃなかったこと思い出せばきっと大丈夫 実感しよう絆(きずな)』とあるね。どう感じる?」

豊かな発想やメッセージ性がイラストやキャッチコピーに込められ、生徒たちがそれぞれの発見を熱く語る。

図書室入り口のほか、購買部の前の廊下にも、新聞を自由に閲覧できる机といすのコーナーが設けられている。社会への窓となる生きた教材を備えた図書室での授業。生徒たちの目は生き生きしている。

(坂井伸行、写真も)