2010年8月20日 読売新聞東京本社 朝刊
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情報を読み解く力を身に着ける。

「見出し付けコンテストをやりましょう」

埼玉県立川越女子高校で7月15日、国語の佐藤弥生教諭(50)が1年生のクラスで見出しを空白にした新聞記事のコピーを配った。「子どもに携帯電話を持たせるべきかどうか」。対立した2人の識者の意見を紹介した記事を読み、生徒らは黒板に自作の見出しを書いた。

続いて、携帯電話の所持を規制する石川県の条例を取り上げた記事について意見を聞いた。「賛成。使っていて時々怖くなる」「反対。保護者がすべきこと」。身近な携帯電話の話題だけに、生徒らも真剣に意見をかわした。

見出しを隠すのは、先入観を持たずに記事を読み、自分で記事のポイントを考えるため。メディアリテラシーを意識した授業だ。「今までは流し読みだったが、読み方が変わった感じ」と渋谷瑞葉さん(16)は話す。

いつもは朝学習の時間を使い、週1回、同僚教師と記事や本の中から選んだ題材について生徒に翌週までに意見を書かせる。題材は、死刑や教育、メディア論など幅広い。大学入試で論文を書くためにも、まずは社会の多くのことを学んでほしいからだ。

佐藤教諭がNIEを始めたのは約10年前。生徒の読解力に物足りなさを感じ、週1回、自分で関心のある記事をスクラップしてもらうことにした。初めは小さな記事しか張れなかった生徒も、続けるうちに大きなテーマの記事を張るようになった。「社会への関心が広がり、読解力も向上した」と手応えを感じている。

佐藤教諭は「大学や社会人になると自分で学ぶ機会が増える。情報をうのみにせず、自分で吟味し活用できる力をつけさせたい」と語る。

机の上には、話題の本「1Q84」などとそれらの書評記事のコピーが並んだ。7月13日、中高一貫の東京都立小石川中等教育学校の国語で、4年生(高校1年)が5人1組に分かれ、書評記事を読み、記事の優れた点や特徴を話し合った。

「難しい横文字ばかりで分かりにくい」。一人の生徒が記事について感想を述べると、稲井達也主幹教諭(47)が「読み手にそれなりの知識を求めていてレベルの高い書評」と解説した。

書評欄は著名な作家が書くことが多い。この日は「プロの書き手が本をどのように批評するのか」を学ぶことが授業の狙いだった。

稲井教諭は4月から月1冊、課題の本を出し、生徒に批評を書かせている。大学入試などを見据え、「批判的な思考力を付けさせたい」と考え、読書感想文より難しい批評を書いてもらう。

「新聞は身近な社会問題を考えさせやすい」。これまでも3年で、新聞と同じスタイルのコラムを書かせており、今後は社説の要約などを授業に取り入れる方針だ。

新聞で社会を学ぶだけでなく、その情報を正しく理解し、自ら発信する力の育成が進んでいる。(名倉透浩)