2010年6月25日 読売新聞東京本社 朝刊
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ユニークな授業改革により、2年で人気校になった。

6月5日、兵庫県立神崎高校(同県神河町)の1年生80人が少人数に分かれ、地元の保育園など13か所を訪問した。体験学習「コミュニケーション授業」をするためだ。

同町内の神崎保育園には10人が訪れ、園長から「お父さんお母さんの気持ちで接して下さいね」と助言を受けた後、園庭へ。早速子どもたちに囲まれ「手をつないで」「遊ぼう」などとせがまれた。

隣町の鶴居保育所を訪れた祖浦拳也(そうらけんや)君(15)は「ほかの高校ではできない貴重な体験ができた」と喜んだ。

1977年、分校から独立して誕生した神崎高は、山あいの小さな町にできた牧歌的な高校だった。98年にJRが電化し、都市部の生徒が増えた頃から、茶髪で制服を着ずに登校する姿が目立つようになった。通学路では、水田の水を抜くような悪質ないたずらが繰り返され、評判が悪化した。

2000年、定員割れが始まった。1年は4学級あったのが、01年度は3学級、03年度には2学級、定員80人に。これに対して入学者はたった45人。もう後がなかった。

同年度に赴任した増尾禮二(ますおれいじ)校長(59)(当時)は、生徒指導だけでなく、「魅力作りが必要だ」と考え、教員らと一気にカリキュラムを練った。

興味が持てる授業には、何が必要なのか。目玉の一つが、増尾校長の着任以前から模索していたコミュニケーション授業だった。当初は、けがをさせたらという懸念の声もあったが、問題を繰り返す生徒にも、幼児は抱っこをせがみ、去り際には「帰ったらあかん」と泣いた。担当した斎藤勝主幹教諭(46)は「頼られ、役に立つことで、素直な気持ちが出てきた」と話す。

東京都立高校で実績を上げた「30分授業」にも目を付けた。他の教員たちも「座学の50分は持たない」と集中力に課題を感じていた。午前中の授業を20分短縮し、基礎学力の定着を目指した。

午後は、体験学習と選択授業の時間に。農林業の町で、高齢者も多いことから、選択科目に「福祉教養」「木工クラフト」「健康スポーツ」「インターンシップ」を新設。自分の興味や進路から選べるようにした。

改革は積極的にアピールした。選択4科目はディスカバリーアワーと名付けられ、スペースシャトルにちなんだ宣伝文句が考案された。PRには地元ケーブルテレビなども活用した。

この結果、04年度には早くも定員割れを解消。05年度は、個性が重視される特色選抜で、募集8人に33人が志願し、県立高トップの倍率となった。3年前から、就職率100%を実現している。

人気校になったことで生徒のタイプが変わり、08年度からは30分授業を廃止した。内海芳樹教頭(53)は「夢を発見し、その夢が実現できる学校という改革の精神を引き継ぎながら常にカリキュラムを見直し、地域から期待される学校であり続けたい」と話している。(伊藤甲治郎、写真も)