2010年3月23日 読売新聞東京本社 朝刊
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校舎と一つ屋根の下の施設で大人と交流する。

1日約40人が入浴介助などのデイサービスを利用する東京都品川区立戸越台在宅サービスセンター。10階建てビルの8階で裁縫などをするお年寄りのもとに、紺色のジャージーを着た区立戸越台中学校8年(中学2年)の生徒たちがやって来た。「よろしくお願いします」。元気なあいさつがフロアに響いた。

「市民科」の授業の一環で、生徒は一緒にクレヨンで色塗りをしたり、座って行う風船バレーを手伝ったり。テーブルで折り紙を折っていた女性(81)は「若いうちは努力と勉強ですからね。頑張ってね」と両隣の生徒に声を掛ける。50分間の交流を終えると、古賀さおりさん(14)は「歌を歌っている時など本当に楽しそうで、こちらも楽しくなる」と笑顔を見せた。

同中の校舎は、同センターの真下、ビルの低層階にある。老朽化による建て替えで、福祉施設との複合施設として1996年に現校舎が完成した。地下1階〜地上4階が中学校、5〜10階が同センターを含む戸越台特別養護老人ホームだ。

教育と福祉を組み合わせる計画には当初、地域住民から反対が相次ぎ、完成まで20回を超える説明会が重ねられた。

完成後、同中は「長続きする交流」を目指し、両者に区の担当者などを加えた交流部会で具体的な交流方法を検討した。その結果、同中の全クラスが各学期1回ずつ同ホームを訪問し、さらに七夕交流会や運動会などでもお年寄りと触れ合っている。

夏と冬の長期休暇には希望者を募り、昨夏は49人の生徒が同ホームでボランティア活動に汗を流した。校内の菜園で収穫したホウレンソウなどを生徒が同ホームに届けることもあり、自然な触れ合いが根づいている。

「3年間交流が続くのが特徴。利用者にとっては世代を超えた交流が生きがいにつながる」。同ホームの山口由美子施設長(52)がそう言うと、同中の権藤善成校長(60)も「生徒には思いやりや優しい心が育っている」と利点を挙げる。

交流は、在学中だけにとどまらない。高校に進学してからも同ホームを訪れる生徒が少なくないという。同ホームで働く介護士の高橋祐人さん(21)は同中の卒業生。在学中は放課後にたびたび上の階を訪れ、利用者の昔話に耳を傾けていた。そこで「人の役に立つ介護の仕事に興味がわいた」と振り返る。

一方、埼玉県志木市立志木小学校は、市立図書館、公民館との複合施設だ。昼休みになると、市民がくつろぐ脇で本を抱えた児童がカウンターに列を作り、公民館では、茶道サークルのメンバーから茶の作法を学ぶこともある。「大人と言えば、親と先生しか知らないようではいけない。人は様々な人間関係の中で生きていくことを学んでいる」と八巻公紀校長(55)。

校舎がもたらした異世代との交流は、成長途上の子どもにとって得難い財産になる。(藤原健作、写真も)