2010年2月6日 読売新聞東京本社 朝刊
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図書室を拠点とした調べ学習が、市民性を磨く教育をバックアップしている。

「今日は市役所の税務課長さんに来ていただきました。これまで学んだことをふまえ、国民健康保険について聞いてみましょう」と金谷佳奈子教諭(50)が語りかける。群馬の県立高校入試を2週間後に控えた今月1日。藤岡市立東中学校3年6組で社会保障を学ぶ最終授業が行われた。

年金、介護といった身近な題材を、社会、国語、道徳といった教科横断的に取り上げた授業。生徒たちは「国民健康保険の負担は全国どこでも同じですか」「仕事を失って収入がなくなったら税負担はどうなりますか」など、てきぱきと質問を繰り出し、調べ学習の成果をうかがわせた。

昨年9月の最初の授業で、生徒たちは制度について知っていることを話し合った。「年金はおばあちゃんももらっている」「けがをして医者にかかる時、保険証を出したよ」。こうした疑問をもとに、7班で分担し、国保、年金、生活保護、介護保険などを学ぶことになった。

ところが、図書室にある関係資料が難解だったため、生徒たちの要望で、図書主任の先生らが端末などで適当な資料を検索。探し出した文献を市立図書館から多数借り出し、市役所や社会保険事務所からは、わかりやすいパンフレットを入手した。

生徒たちは、これらの資料で制度の仕組みを勉強し、分からないところは関係機関に出向いて直接質問。その上で、班ごとに制度の仕組みをわかりやすく模造紙に図示し、まとめの発表を行った。

一連の授業を終え、「安定した職業に就き、父母と同居し、生活を助けたい」と話すのは湯井明子さん(15)。一方、根岸奈穂(なお)さん(15)は「夢を抱きながら安心して生活できるのは、いろんな制度が整っているからだと、感謝しつつ勉強に励みたい」と語った。

「様々な制度に支えられて生きていることを認識してもらうのが狙いだった。一つの資料だけでは不十分で複数の資料に当たれる図書館は調べの拠点として不可欠。生徒たちがその活用方法を知ったのも成果」と金谷教諭。岸正博校長(60)は「チームで物事を成し遂げる楽しさ、情報を判断し、表現、コミュニケーションする力の育成にもなったと思う」と語る。

同校は昨年秋、図書室を改装した。テーブルカバーを交換し、窓辺のカーテンをレースに替え、お薦め本の展示コーナーを設置。書架にも変化をつけるなどして「思わず立ち寄りたくなる」(岸校長)魅力的な空間になった。

地域ボランティアに毎週水曜日、昼休みに放送で小説や民話の読み聞かせをしてもらうなど、読書への関心を高める運動をした。この結果、4年前には2,000冊を切っていた年間貸し出し数が、今年度は12月までで4,360冊と大幅に増えた。

気楽な雰囲気のなかで活字に親しみ、生徒たちは自立への道を歩む。(坂井伸行、写真も)