2009年6月9日 読売新聞西部本社 朝刊
新聞記事の画像

2011年度から小学校5、6年生で外国語活動(英語)が必修化される。新学習指導要領の目玉の一つとして、移行期間の今年度から全国のほとんどの学校で先行実施が始まっている。これまで縁遠かった「英語」と、現場はどう向き合っているのだろう。(向井由布子)

◆楽しむ授業へ頻繁研修

「Look at me! Volunteer,please!(注目! 誰か手伝って!)」

福岡県大牟田市の市立明治小学校。5年生の担任、小宮武士教諭(41)の問いかけに、子どもたちが次々と手を挙げた。

「Yes! Yes!」

5月29日、5年生が取り組んでいたのは「11〜20までの数字」。すごろくなどを使って友達と好きな数字や進むマス目の数を英語で質問し合い、ゲーム感覚で英語に親しんだ。

小宮教諭の授業中の簡単な指示や褒め言葉は、ほとんど英語。発音の反復練習はわずかで、文法の説明は一切ない。それでも、「My turn(僕の番だよ)」などと、日常的な英会話が自然に飛び交う。

大牟田市は00年度、市内の全24小学校の6年生の授業に週1回ペースで年35時間の英語を取り入れた。今では5、6年生の35時間はもちろん、総合的な学習の時間などを利用して3、4年生35時間、1、2年生約15時間と、必修でない学年にまで広がった。

大半の授業は担任が一人で行うため、市独自の指導案や、外国語指導助手(ALT)による発音集(CDやビデオ)が、経験の浅い教師をバックアップ。公開授業などでノウハウを学ぶ研修も頻繁に行っている。

ある市立中学の調査では、1年生の9割以上が話したり聞いたりすることを中心に「英語が楽しい」と答えるなど成果も出ている。「以前は発音ばかり気にしていたが、今は私がコミュニケーションを楽しむ姿が手本になるよう心がけています」と小宮教諭は胸を張る。

◆苦手な先生、不安も

文部科学省の調査によると、昨年度、全国の小学校の97%が何らかの外国語活動を行った。大牟田市同様、全学年で英語を取り入れている佐賀県多久市は、市内の全教諭が参加する研究授業を実施。宮崎市は45校に対し25人のALTを配置する。

一方で、自治体や学校によって取り組みに温度差があることや、不安を抱える教師が少なくないのも事実だ。山口県萩市の女性教諭(47)は、週1回の授業のために午後10時頃まで準備する毎日が続いている。なじみの薄い教科で子どもの興味を引く知恵は簡単に浮かばない。校区の中学校から英語教師が見学に来ると、発音が恥ずかしくてぎこちない授業になってしまう。「前任校は教材もほとんどなく、取り組みも熱心ではなかった。必修化まで2年。間に合うかしら・・・」

「中学英語の前倒しでないことは分かるが、ある程度は正しい発音をして」。長崎県北部の市で行われた小中学校合同研修会で、中学側からこんな要望が出た。市教委は「英語が苦手な先生は、研修を重ねて克服するしかない」とする。

大牟田市教委の担当者としても外国語活動導入にかかわった明治小の安田昌則校長(54)は「子どもと教師が楽しめる授業が一番。そのためには、学校や教育委員会で教材やカリキュラムを共有化し、教師の負担を減らすことが大切」と指摘する。

◆「英語で授業」へ高校も様変わり

2013年に全面実施される高校の新学習指導要領でも「英語」は様変わりする。その中で、教育現場が文部科学省の狙いを測りかねているのが「授業は基本的に英語で行う」とした点だ。

同省はこの方針について生徒の「聞く」「話す」といった能力を伸ばすためとする。だが、現場は「会話中心の授業はともかく、文法を細かく説明する授業でもすべての教師が100%英語を使いこなせるのか」「生徒はどこまで理解できるのか」--といった不安を隠せない。

福岡県教委の担当者は「文科省が示す『基本的』の範囲が分からないが、受験を控えた3年生に英語での授業は行いにくいかもしれない」と戸惑う。7月に文科省が県の担当者を集めて説明を行うことになっているが、ほとんどの県教委が「具体的な方向性はその後」としている。

このほか、教える単語数の目安が500語増の1,800語となり、中学と合わせ約3,000語に増加。約30年前の高校生が学んだ単語数に戻り、韓国や中国と同じレベルになる。