2009年6月24日 読売新聞東京本社 朝刊
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元女性校長らの奮闘を土台に、生徒同士が支え合う学校へと変わった。

教室には私語もなく、意欲的に問題に取り組む生徒らの姿があった。広島県立安西(やすにし)高校(広島市)での日本史の授業。三堂和生教諭(57)の問いかけに、生徒は4人1組になって意見を出し合い、教科書を参考に答えを出した。まじめな生徒の姿に、三堂教諭は「全く別の学校になったよう」と感じている。

「こんな学校は見たことがなかった」。2001年から教頭や校長を務めた山広康子元校長(60)は振り返る。生徒は化粧やアクセサリーなどで格好は乱れ、授業中でも自由に教室を出入りした。赴任の翌月には6件の暴力事件が連続して起こった。たまり場だった玄関付近には、菓子袋や、げた箱からこぼれ落ちた教科書が散乱していた。

それ以上に驚いたのが、教師のあきらめムード。「1学期が過ぎれば静かになりますから」。課題ある生徒は入学当初に辞めることが多く、教師からそんな言葉が漏れるほどだった。01年度の中退率は14.8%(86人)だった。

生徒指導担当の教頭だった山広さんは、やればできるとお経のように唱えていた。中断していた遅刻指導を始め、校内を巡回しては生徒を注意し、ごみを拾って美化に努めた。「時には問題を起こした生徒と一緒にご飯を食べたり、自宅に行ったり。その子の気持ちをくもうと思った」

その年の年末、NPO団体と校内のトイレ掃除を行った時のこと。「やってみて気持ち良かったのでまたやりたい」。必死で掃除する大人の姿に感化されたのか、暴力事件を起こした生徒らがそんな言葉を口にした。当番制だった校内の掃除を全員でやるようにしようと、教師の方から提案が出るようになってきた。

「当たり前のことを当たり前にできるようにと思った。こちらが本気の姿勢を示せば生徒に伝わる」と山広さんは語る。

「生徒は落ち着きを取り戻し始めていたが、意欲の面では今一つ」。3年前に着任した才木裕久前校長(55)はそう感じていた。学校に対する生徒の意欲をかき立てることが次の課題だった。

「学びの共同体」を参考に、2年前からすべての授業で始めたのがグループ学習だった。1人では難しい問題を、4人1組で協力して解く。解ければ自信になる。「仲間が待っていると感じられれば学校への意欲は高まる。支え合う、認め合う仕組みが必要だった」と才木さんは話す。

昨年6月の文化祭。各クラスが出店するテントで、多くの生徒が一緒に活動する姿が見られた。以前は当番の生徒しかおらず、校内で所在なげにたむろしていた生徒が見られた風景はそこになかった。

昨年度の中退率は3.7%(20人)まで下がり、入試の倍率も上がった。「今度は社会人として必要な力をつけさせたい」と、奥山雅大校長(55)は考えている。(名倉透浩、写真も)