2010年1月21日 読売新聞東京本社 朝刊
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心の教育を目的に、新たな教科を設ける学校がある。

32人の小1の児童が、2列に並んで書道室へと向かう。着席すると、日直の合図に合わせて、「お願いしまーす」と元気な声が弾んだ。

国語の書写で毛筆を学ぶのは、学習指導要領では3年からだが、静岡県伊東市の同市立南小学校では、2006年度から「書道科」を設け、年間34〜35時間、1、2年生に書道を教えている。

同市が「書道教育特区」に認定され、市の研究開発校になったのが始まり。今年度からは教育課程特例校として続けている。

重きを置くのは、字の上達でなく、書道の作法を通じて、伝統文化への関心や落ち着いて物事に取り組む姿勢、思いやりの心を育むことという。

ただし、「基礎や書道に対する態度を正しく学ぶには、専門家の力が不可欠」として、授業には毎回、市の委託を受けた日本書道芸術専門学校(伊東市)の講師が加わる。児童が書くことに専念できるよう、準備や後片づけも講師がする。

この日、挑戦したのは、漢数字の「八」。

「2画目が滝の流れに似ていると思う」「両方を見ると、人の首筋みたいです」

国語との関連性を意識し、漢字への関心が高まるよう、筆を持つ前に、字のかたちから連想するものを児童に答えさせ、その上で字の由来を説明している。

次は、腕全体を筆に見立てて、1画ずつ筆の運び方を練習。書く直前には、黙想して心を落ち着かせる。つけ過ぎた墨は、すずりの縁で払うよう教えており、墨で半紙をひどく汚す児童はいない。

書き上げるたび、隣の席の児童とお互いの書の良い点をたたえ合うが、それ以外は私語を交わすことなく、最後まで集中していた。

「来校者からは『しっとりとして落ち着きがある』と評される。ほかの授業でも、1年生の態度に問題はない」と道下幸夫校長(54)は話す。

その教育効果を見て、市内の他の小学校や、同県長泉町、裾野市などにも、低学年の書道教育は拡大している。課題は、講師任せにしないこと。1時間ごとの狙いを明確にした学習計画を作り、担任と講師が役割分担をして指導するよう努めている。

思いやりの心の育成や規範意識の確立を狙いに、福岡県八女市は、教育課程特例校制度を利用し、今年度から「礼節・ことば科」を小中一貫教育校の上陽北ゼイ(じょうようほくぜい)学園に設けた。小学1、2年は年間20時間、3年以上は40時間をあてる。

あいさつと礼儀作法の「礼節」、敬語の使い方が中心の「ことば」、「実技体験」の三つで構成。実技は地域で盛んな剣道と茶道を採用した。男女とも小学3、4年は茶道、5、6年は剣道を、中学生は茶道と剣道の両方を学ぶ。

同校小学部の枦山(はぜやま)俊朗校長(56)は、「男子も女子も、実技を楽しみにしている。目上に対する言葉遣いが良くなった」と話す。

新教科が導いて、子どもたちは少し大人の顔になる。(関仁巳、写真も)