2010年7月24日 読売新聞東京本社 朝刊
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横浜市立岡村小学校(同市磯子区)。休み時間に行われる恒例の縄跳びタイムで、女児が一人、児童の輪から外れて座り込んだ。児童支援専任教諭の黒川素子教諭(48)が、すかさず駆け寄り、女児の脚に縄が当たってできたアザを認める。「ひとりじゃ行きにくかったのね」と語りかけ、優しく保健室へと導いた。

「担任一人ではどうしても目が届かない児童が出てくる。そうした子の変化に素早く気づき、フォローするのが、専任教諭の役割」と、黒川教諭が説明してくれた。

同市教育委員会は今年度から、いじめや暴力行為などに専門的に対応する児童支援専任教諭を市内70小学校に配置した。各校で校長がベテラン教師から指名し、特別支援教育コーディネーターを兼任する。2007年度から実施したモデル事業で効果が確認され、本格導入となった。今後5年間で全346小学校に広げる計画だ。

「中学校では1973年度から専任教諭を導入しているが、ここ数年は子どもをめぐる問題が低年齢化し、小学校にも置いてほしいと要望が強まっていた」。同市教委人権教育・児童生徒課の斎藤宗明課長(54)が説明する。

市内の20小学校で行われたモデル事業では、給食当番の配膳(はいぜん)を受け取らないなど、様々ないじめが確認された。いじめがいかに卑劣な行為であるかを専任教諭が指導し、いじめが深刻化する前に解決した事例もあったという。

専任教諭4年目になる黒川教諭は、登校時は校門に立ち、掃除の時間は教室を回って児童に頻繁に声をかける。「何でも相談できる存在が専任教諭。保護者にとっては、成績をつける担任とは違う中立な存在です」と黒川教諭。

市内の別の小学校のPTA役員は「学校と保護者との間の垣根が低くなった」と評価する。

こうした取り組みに注目する自治体もある。広島市教委の砂原文男・生徒指導課長(57)は「小学校から専任がきっちりと対応すれば、中学校のいじめ防止などにもつながる」とする。だが一方で、「専任教諭の負担軽減のために雇う教員の人件費がネックとなり、簡単には導入できないが」とも指摘する。

学級担任制の小学校では、児童の問題を担任一人で抱え込みがちだ。専任教諭を置くことで、いじめなどの問題に学校というチームで立ち向かう体制を作り上げる。そこに横浜市教委の狙いがある。(保井隆之、写真も)