2010年5月31日 読売新聞東京本社 夕刊
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正しい食生活を身につける「食育」の中核と位置づけられる栄養教諭の配置に、都道府県で大きな隔たりが出ている。制度が導入されてから5年が過ぎたが、文部科学省の調査では今年4月現在、大阪府が385人、北海道362人、兵庫県322人と続くのに対し、児童生徒数の多い首都圏では千葉は38人、神奈川40人。公立小中1940校を抱える東京都はわずか27人で、現場からは「食生活の乱れは学力や体力、意欲の低下に直結する」と増員を求める声が上がっている。

大阪府は、2008年度から、栄養教諭を年間100人以上のペースで増員し、全国最多になった。

08年度、中学生対象の文科省全国調査で大阪府は「朝食を全く取らない」か「あまり取らない」と答えた割合が全国平均(8.1%)を上回る13.3%に上った。府教育委員会は、食生活の乱れが学力低下や体力にも悪影響を及ぼしているとみており、「毎日朝食を取る」割合で全国平均より良い結果を出すことが目標だ。

北海道では、同様の調査で、児童や生徒が一人だけで食事をする「孤食」の割合が高いことが危機感につながり、栄養教諭を積極的に増員している。

一方、立ち遅れた首都圏。東京都教委は、「教諭らに食育を任せる独自の制度があったため栄養教諭の配置が遅れたが、配置した学校では給食の食べ残しが減少するなど、実績が上がっている。増員を検討したい」という。神奈川県教委では「より多く採用したいが、予算減に努めており、難しい」と苦渋をにじませた。

栄養教諭は養護教諭などと同じく、文科省が取得条件を定め、各都道府県が免許を付与する。給食の栄養管理を担当する栄養士が、講習などを受けて取得するケースが多い。元文科省学校給食調査官で女子栄養大短期大学部の金田雅代教授は、「子供の食生活の乱れは、将来の生活習慣病や肥満増大につながるだけに、学校と家庭をつなぐ専門家の意義は大きい。配置が遅れている自治体は、危機感の薄い面があるのではないか」と話している。

◆「朝食抜き」改善に効果 栄養士から転身、飯島さん(練馬)

栄養教諭の存在は子どもたちの食生活を少しずつ変えている。

東京・練馬区の農園。5月中旬、同区立八坂中学校の生徒が、栄養教諭の飯島敬子さん(55)の引率で乳牛と触れあった。「母親は、牛乳で子供に命を分け与えているのよ」。飯島さんがそう説明すると、生徒らは交代で子牛をなで、「ふかふかしている」と目を輝かせた。牛乳の大切さを考える「食育」の授業だ。

飯島さんは小中学校の栄養管理30年のベテラン。栄養士として同中に赴任した後、栄養教諭の免許を取得、08年に教諭として都に採用された。同中では、総合的な学習の時間に生徒が育てたり収穫したりしたほうれん草やラディッシュを、給食のサラダやゴマあえに使う。土日の親子料理教室も企画し、計500人以上が地場野菜を材料にした朝食や弁当作りに参加した。

こうした取り組みが花開き、朝食を食べない子が2割台から1割台に減少。緑黄色野菜を中心に20%を超えていた給食の食べ残しも、1%以下になったという。飯島さんは、栄養教諭という「肩書」が保護者への説得力を増したと感じている。