2009年6月18日 読売新聞東京本社 朝刊
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宇宙・天文教育をより充実させようと、教師たちが情報交換している

発泡スチロールの玉を示しながら、「この教材を使って授業をしている先生はいますか」と問いかける司会者。参加者の一人が手を挙げ、「地球と月に見立てています。子どもは目に見える形で宇宙の大きさを示した方が興味を持つ」と答える。東京都江東区有明の東京ファッションタウンビルで6日、宇宙航空研究開発機構主催のシンポジウムが開かれた。

シンポの狙いは、宇宙教育を学校現場でより広めること。地球と月のほかに、月探査衛星「かぐや」が月から撮影した地球の画像を使った授業や、本物の宇宙食を使った授業など、子どもに分かりやすく説明する実践例や教材がいくつも示された。

参加した教員や教材メーカーの社員らは、積極的に授業を行う全国の先生たちの話を聞き、充実した様子。青森市立造道(つくりみち)中学校の三上敏彦教諭(40)は、「自分の授業で工夫してみようと思うこともたくさん浮かんできた」と話していた。

参加者の一人に、東京都大田区立小池小学校で理科支援員をしている和田直樹さん(48)がいた。本職は宇宙関連メーカー勤務だが、子どもの通っている小学校で理科の授業を手伝うようになり、子どもの卒業後も続けているという。

和田さんは、宇宙機構が2004年度から始めた宇宙教育のボランティア指導者「宇宙教育リーダー」の認定も受けている。それでも、授業などで学校現場に入る難しさを感じている。「授業などを通じて知り合った学校の先生の紹介で新しい学校に入っていくことしか手だてがない」という。

「宇宙の自然現象や技術を学校の教育現場に伝える橋渡し役が不足している。宇宙の教材は身近にたくさんあるのに、気づいていない先生が多い。今後は民間人も授業に協力しやすくできるように、学校側の受け入れ体制を作ることが必要なのでは」と話す。

宇宙教育の充実は、高校でも求められている。宇宙・天文分野を教える地学の選択は、現状では極めて少ないが2012年度から実施される新学習指導要領により、履修の増加が予想されているからだ。

新指導要領によると、高校理科は「地学基礎」「物理基礎」など、「基礎」の付く科目のうち3科目を選択してもよくなり、文系を中心に地学の履修が増えそうなのだ。

文部科学省は、「宇宙・天文領域では、小中ともに新しい内容が入っているので、高校側もそれに連携するようにした。今までよりも地学が選択しやすくなっているはずだ」(初等中等教育局)としている。今年から始まった教員免許更新の講習で、天文・宇宙分野を扱う大学も多い。

学校の内と外の両方から、宇宙・天文教育を後押しする動きが続いている。(塩見尚之、写真も)