2010年3月18日 読売新聞東京本社 朝刊
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最新機器が配備された教室が授業を変える。

薄暗くした教室。プロジェクターを通して大きな立方体が、ホワイトボードに映し出された。「では、行くよ。よく見ててよ」。森本幸宏教諭(37)がパソコンを操作すると、立方体は解体されるように平面の展開図に変化していく。森本教諭は展開図の各頂点にペンで番号を振り、再び立体に戻してどの頂点が重なり合うかを示して見せた。

東京都目黒区立目黒中央中学校には、各教室にパソコンやプロジェクターなどのICT機器が配備されている。

1年生の授業で森本教諭が使ったのは、市販のデジタル教材。「言葉だけではわからない子が、実際に図を開いて見せると理解する」と説明する。従来なら模型を作るところだが、手間がかかるうえ、理解しやすさでも及ばない。授業は生徒から「スムーズだし、よくわかる」と好評だった。

デジタル教材は自作が多い。この日、英語の佐野文仁教諭(31)は、ホワイトボードに自由の女神像などさまざまなものを二つ並べて映し出した。佐野教諭が約8時間かけて作った教材だ。「as・・・as」を使った同等比較の表現を教える授業で、「どちらが大きい?」という意味の英文が添えられ、ゲーム感覚で考えさせる。目の錯覚を利用したものもあり、「右側だと思う」「実は同じなんじゃない」と、授業は大いに盛り上がった。

区立の3校が統合してできた同中は、2008年に新校舎が完成した。各教諭が自分の教室を持ち、教室のパソコンを自由に設定できるため、授業の効率がいい。教材は学校のサーバーに一括して保管され、どの教師でも使うことが可能だ。

英語の岸裕子主任教諭は「教材を一度作れば繰り返し使え、手を加えるのも簡単」と話す。いい教材を作ろうと、教師同士が意見交換し、切磋琢磨(せっさたくま)する土壌が生まれている。

教室でもう一つの“武器”となるのが、実物投影機だ。生徒のノートや答案などのほか、立体物も映し出せる。理科の解剖や書道で手元を映して手本を見せたり、体育のマット運動で動画撮影し、手足の伸び具合を確認したりするなど、活用法は幅広い。

実物投影機を製造・販売するエルモ社(名古屋市)によると、価格が当初の1台80万円程度から9万円前後まで下がったことで、わかりやすさを求める小学校低学年を中心に需要が急増。昨秋頃から全国の教育委員会から数百台単位の注文が相次いでいるという。「近い将来、各教室に1台が当たり前になるだろう」と同社は見る。

伊藤俊典校長(53)は「『わかる』ことは授業の中ですごく大事。何より生徒が授業に集中するようになった」と手応えを示す。区の担当者も「電子黒板ではできない芸当がたくさんできる。効果は予想以上に高い」と評価する。

わかる授業とICTのある教室は、今や切り離せない関係にある。(藤原健作、写真も)