2010年4月17日 読売新聞東京本社 朝刊
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担任が黒板にチョークを走らせていると、後ろから話し声が聞こえてきた。横から目を配る副担任が、「話を聴きましょう」と注意する。群馬県太田市立宝泉中学校では昨年度から、1年の全クラスで複数担任制を試みている。

背景には、中学校に入学して学校生活になじめない「中1ギャップ」がある。保護者対応にも手間がかかり、現場の仕事は複雑化している。学年主任だった斎藤守正教諭(46)は、「何か教員が支え合う仕組みがないかを考えた」と説明する。

県の支援で教員が1人加配されたこともあり、1年の4学級すべてで2人担任が実現。中堅・ベテランと若手がペアを組み、朝の会や帰りの会などの学級活動では、共に教室に入った。給食の時間は、受け持ちでないクラスにも行き、学年全体で情報を共有した。

昨春、新規採用教員として副担任に入った本間健介教諭(26)は、「最初は不安だったが、担任と一枚岩になってクラスを見ることができた。1人で思い悩むことはなく、学級運営の勉強にもなった」と振り返る。

東京都新宿区には、校長経験者が若手教員の相談に乗る授業改善推進員の制度がある。区教委の非常勤職員として、年に数回、区立の小中学校を訪れ、1〜4年目の若手に授業や学級運営について助言する。とりわけ新人には、家庭訪問での親との接し方など、初歩的な質問にも答える。

2006年5月、区立小学校の新人女性教諭が、保護者対応などに悩んで自殺した。周りの教員も忙しく、女性が相談できる環境は十分でなかった。同年4月に推進員制度は始まっていたが、活動は6月頃から。この教訓もあり、翌年度からは4月中に1度は新人の様子を見ている。

新年度、区立小学校に配属され、初めて教壇に立つ新人は12人。うち9人が担任に就いた。彼らを見守る推進員の前沢紘一さん(65)は「最初は分からなくて当然。職場になじめるように支えていきたい」と話す。

自殺した女性教諭がいた小学校のように、1学年1学級の小規模校では担任の日々の負担が大きく、その支援をどうするかも課題だ。教員が1人で悩まずに済む環境づくりの模索は続く。(大谷秀樹、写真も)