2010年6月8日 読売新聞東京本社 朝刊
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◆生徒指導に専念/教師の力量伸びない

同級生への誹謗(ひぼう)中傷など「ネットいじめ」の温床になる学校裏サイト。その監視を民間業者に委託する自治体が相次いでいる。東京都、北海道、三重県、札幌市、宇都宮市、北九州市、東京都江東区の7自治体で、教師が多忙で裏サイトの監視やサイト管理会社との折衝に費やす時間を割けないためだ。ただ、識者には教師自体がネットを見守る力をつけ、指導していくことが大事と指摘する意見もあり、教育現場で論議を呼びそうだ。

学校裏サイトの監視委託は、2007年頃から一部の私立中高で始まったという。東京都は6月初め、入札を行い、都内のIT関連企業が初年度分として約1,900万円で落札した。今月中にも都下の公立小中高約2,200校を対象に監視活動に入る。

江東区では独自予算を組み、この4月から先行実施している。予算は年347万円。全区立の中学(22校)の学校裏サイトが対象で、都内のIT関連企業「ガイアックス」に委託した。同社は福岡県に置く監視センターで毎日、裏サイトへの書き込みを監視している。

同区によると、4月だけでも、「死ね」「きもいし!チビデブ」などの悪質な書き込み48件を発見。同社はそのほとんどについて、サイト運営会社に削除要請し、すでに消されたという。見つかったものは区教委に報告される仕組みで、同区立中の男性教諭(49)は「監視してもらえれば、こちらはデータを基に、生徒指導に専念できるから助かる」と委託を歓迎する。

このほか、札幌市で5月から、市立約320校を対象に委託業者による監視が始まった。他の4自治体も秋頃までに相次いで業者委託に乗り出す。都内の区教委の担当者によると、昨年頃から「監視を請け負いたい」と業者からの売り込みが絶えないという。

「サイトをかぎ回っている」。学校裏サイトで悪口の書き込みをされた生徒の相談を受け、サイト管理会社に削除依頼をした横浜市の市立中学の教諭は昨年、同じサイト上でこんな中傷をされた。悪質な書き込みから生徒を守ろうとする教諭まで中傷の標的になることを示したこの問題は、学校関係者に衝撃を与えた。「学校だけでは対処できない現状がある」(江東区教委)との危機感が、業者委託が相次ぐ背景にあるようだ。

一方、業者委託に否定的な自治体もある。石川県教委は4月から、金沢市内の県教育センターにパソコンと携帯を2台ずつ設置。教員8人を含む対策チームで監視活動を始めた。同県教委は「民間に比べると、技術や効率で劣るかもしれないが、『先生が見ている』と生徒に感じてもらうのが大切。民間に丸投げはできない」と話す。

元群馬大教授で、ネット時代の教育を考えるNPO法人・青少年メディア研究協会理事長の下田博次さん(66)も、「ネットの書き込みは子供たちの本音。教師自身がネットを見守る力を伸ばし、子供たちを指導していくべきだ」と指摘している。