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2010年2月21日 読売新聞東京本社 朝刊

国民読書年フォーラム 本は心育む栄養 言語力を磨こう=特集

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◆活字文化に親しもう

◇本を読もう・2010国民 [こくみん] 読書年

「国民読書年フォーラム」が2月6日、千葉県市川市の行徳 [ぎょうとく] 文化ホールで開かれました。明治大学教授 [きょうじゅ] の斎藤孝 [さいとうたかし] さんが「読書力とコミュニケーション力」をテーマに講演 [こうえん] 、 いたるところにユーモアを交えながら、本の魅力 [みりょく] や読書のききめを話すと、550人の参加者 [さんかしゃ] はメモを取りながら熱心 [ねっしん] に聞き入っていました。続 [つづ] いて作家の奥泉光 [おくいずみひかる] さん、セブン&アイ出版 [しゅっぱん] 社長水越 [みずこし] さくえさん、文字・活字文化推進機構 [すいしんきこう] の肥田美代子 [ひだみよこ] 理事長が「言葉の力と心をはぐくむ」について語り合いました。 (コーディネーターは長井好弘 [ながいよしひろ] ・読売新聞東京本社編集 [へんしゅう] 委員)

基調講演 [きちょうこうえん]

◆読書力は対話力

◇明治大学教授 斎藤孝さん

日本人の半分近くの人がほとんど本を読まないという調査結果 [ちょうさけっか] が出ました。大学生でも1ヶ月に1冊 [さつ] 、まともな本を読むことが少なくなっています。本を読ませるために、学生同士 [どうし] でおすすめブックリストを見せ合いながら話をさせる方法 [ほうほう] も取っています。

どうして本が大事なのか、読書が大切なのか。家に本があるということが大切なことなんです。本があるということは、大変 [たいへん] 偉人 [いじん] 先人が部屋にいて刺激 [しげき] を与 [あた] えてくれるということです。 ニーチェフロイト福沢諭吉 [ふくざわゆきち] などが本棚 [ほんだな] に並 [なら] んで背表紙 [せびょうし] からにらみをきかせてくれているわけです。

人間の文明はもともと、言葉、中でも書き言葉によって成 [な] り立っています。活版印刷術 [かっぱんいんさつじゅつ] が生まれ知が共有 [きょうゆう] されるようになってから急激 [きゅうげき] に文明が発達 [はったつ] したのです。 書き言葉を共有していない日本人が半数近くいるとなると、社会は発展 [はってん] をあきらめただけではなく、おたがいのコミュニケーションができにくくなってしまいます。「むかつく」という言葉の流行を研究したとき、生徒 [せいと] たちが授業中 [じゅぎょうちゅう] に「むかつく」ばかり言って、授業にならないという相談を学校の先生から受けたことがあり、ここまで日本人の知性 [ちせい] がなくなったのかとおどろきました。

実は、他者に対する態度 [たいど] というのは、読書量 [どくしょりょう] と関係 [かんけい] があります。読書というのは、人の話をたくさん聞くという行動だから、他者の話を落ち着いて聞けるようになります。「むかつく」「うざい」と、コミュニケーションを断 [た] ち切るような態度には出なくなるわけです。まずは話を聞き、ちゃんと理解 [りかい] した上で、自分のコメントをする、そういう対話ができるようになります。本を読まない人でも会話はできていますが、その会話と対話はレベルがちがいます。 大学のゼミで学生と話をすれば、どの程度 [ていど] 読書をしているかが分かります。 書き言葉にしか出てこない語彙 [ごい] を話し言葉で使っているかどうかで分かるわけです。

みなさんは漢字の力があるから私 [わたし] の話が聞き取れます。意味がふくまれる率が高い話をしようとしたら、漢字の熟語 [じゅくご] を使わざるを得 [え] ません。 従 [したが] って、話す、聞くのおおもとには漢字変換力 [へんかんりょく] 、文字に直す力が無意識 [むいしき] に働 [はたら] き、それらは読書量に支 [ささ] えられているわけです。

内容 [ないよう] の濃 [こ] い対話をするためには、要約力 [ようやくりょく] 、質問力 [しつもんりょく] 、コメント力が大切です。要約力は、相手の言っていることをぎゅっとまとめる力。本を読んでいると、まとめる力は付 [つ] いてきます。質問力は、相手に「ああ、いいことを聞いてくれた」と思わせる力です。私の場合、筆者らに聞きたいというところに印 [しるし] を付けながら読んでいます。相手の言葉にコメントしてあげると、コミュニケーションがうまくいきます。 自分の考えを研ぎ澄 [す] まして、ひとつの言葉にぎゅっと縮 [ちぢ] める作業には集中力がいりますが、読書によって得られる語彙や言い回しを引用しながら話すと、キレのいいコメントができるようになります。

読書とは人間における知性の土台みたいなものです。ちゃんと歩かないと健康 [けんこう] が損 [そこ] なわれるように、本を読んでいないといいかげんでおおざっぱな人間になってしまいがちです。落ち着いて話すことができるメンタリティーと力を育ててくれるのです。

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